「ジュエルディガー」創作ノート

こんにちは、するめデイズのチカールです!

ゲームマーケット2018秋では、自身にとっては7作目、daiとの共作としては「たのめナイン」「ポコン!」に続いて3作目となる新作「ジュエルディガー」をリリースします!

ゲームの内容に対しては強い手応えを感じている半面、本作をリリースするに当たっては非常に考えることが多く、中々に難しい制作となったのですが、そんな本作の制作経緯をデザイナーズノートという形で語ってみようと思います。

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▲「ジュエルディガー」のパッケージイラスト。レトロポップでカワイイ仕上がりになりました!

 

 

【①共作による特殊な着想】

作は高校からの知人でもあるdaiとの共作によるゲームなのですが、彼との共作は奇妙なほどに毎回同じパターンを辿ります。

まずは、daiから「新しいゲームのアイディアを思いついた!」という声がかかり、ファミレスや喫茶店に集まって話を聞きます。ただし、この段階ではゲームとしてまとまっているわけではないので、持ってきてもらったモックで実際に試してみると、あっという間に処理が破綻したり次々に欠陥が明らかになり、残念ながら遊べるゲームとしては成立していないことが大半です。

しかし、そこから「この要素は不要だから削っていいんじゃないか?」「どうやったら遊べる形になるのか?」とアイディアを出しながら、しばらく話し合っていくと、なぜか同じコンポーネントを使った、まったく違う内容のゲームが完成していきます。そして、この段階ですでに製品版としてリリースする際とほぼ変わらない完成度まで、不思議と一気に仕上がってしまうのです。

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▲最初のテストは破綻も、「何か遊べる形にならないか?」とルールを検討していくと、新たなゲームが生まれていきました

 

例えば、「たのめナイン」の際は「四則演算の数式で10の倍数を作るゲーム」だったものが「1~9の足し算だけで10の倍数を作るゲーム」になり、「ポコン!」の場合は「オールマイティー入りの5目並べ」が「両面同じパネルが入ってるオセロ」になり、今作の場合は「ミープルが移動して他人を押し出す陣取り」が「同じ色を繋げながら裏返すパネル配置ゲーム」という、いずれもまったく違う形になりました。

そして、この特殊な制作方法を取ると、次に重要になってくるのが「これは一体どういうゲームで、どんな価値を持った作品なのか?」という評価をしなければならないということです。なぜなら、本来であれば先に立てるべきコンセプトが完全な後付けとなってしまうからです。

その評価の段階でお蔵入りとなったものも当然いくつかあるのですが、その中で「これは間違いなく面白く、誰からもプレイしてもらう価値がある!」と思えるものができた際には、そこからテストと調整を重ねながら最適な形を検討し、製品版を制作していくことになります。

 


【②プレイングの発見】

評価の過程で、思いもよらない発見があることもあります。例えば、「たのめナイン」はもともと2人用として考えたゲームでしたが、テストをしてみると3~5人でも問題なく遊ぶことができて、多人数の方がより盛り上がるパーティーゲームだったということが発覚しましたし、「ポコン!」は子供でも遊べる単純なブラフゲームながら、大人でも腰を据えて楽しめる戦略性の幅がありました。

今作を自分が最初にプレイしたときに感じたのは、「ルールはシンプルにまとまっていて欠陥はなく、十分にゲームとしても成立していてるが、抜き出た面白さはなく、目新しさも薄い」といった非常に微妙な印象であり、「他に思いつくものがなければ、次の新作の候補にしておいてもいいかな…」といった程度の感覚を持っていました。

ところが、そんな微妙だった第一印象を覆すことになったのがプレイングの発見でした

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▲より遊びやすい形のモックを制作し、テストプレイを重ねていくと…

 

daiと何度も対戦を重ねていくと、次第にこのゲームで有効となる闘い方のセオリーや略が次々に明らかになっていき、そのことごとくに対して驚くほどにバランスが取れている。「ルール」という基盤が生み出し、その先にあるプレイングを開拓していくことで、破綻が生まれるどころか次々に面白さが増していくという驚きの連続となり、最終的には自分もdaiも「このゲームは今まで作ったものの中でも、一番面白いんじゃないか!?」という評価へと変貌していきました。

ジュエルディガーはやればやるほどに面白さを増す、文字通りのスルメゲーだったのです!

 


【③「スルメゲー」という難題】

ところが、ここで「やればやるほど面白くなる、奥深さを持ったゲームができた!」と手放しに喜ぶわけにはいきません。なぜなら自分たちが作っているのは同人アナログゲームの新作であり、メーカー製品でもなければ伝統ゲームでもないからです。

同人アナログゲームの新作は現在、年に3度のゲームマーケットで約200~300本ずつ発売されています。メーカー製品や海外のデザイナーによる作品も次々に輸入されるため、これらの新作すべてを遊ぶどころか、把握することももはや絶対に不可能という状況にあります。

プレイするためには人数と場が必要になるアナログゲームの世界、まして当たり外れが激しく玉石混交の様相を呈している同人ゲームの世界では、最初のプレイで微妙と感じたゲームが、もう一度プレイされる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

例えば、同人ゲームの新作として「麻雀」が発売されたとすれば、役や点数計算をはじめとしたあまりに複雑なルールを誰一人把握することができず、広く遊ばれることはないでしょう。

では次に、基本的なルール自体は非常にシンプルである「囲碁」だったとしたらどうでしょうか?

これも、同じく広く遊ばれることはないでしょう。なぜなら、囲碁はシンプルなルールの上に構築されていく手筋やセオリーといったものを理解しなければ、ゲームとしての面白さを理解できないからです。指南書や講座などが数多く存在していますが、それらが存在しない段階から自力で発見していくことは極めて困難だと言えます。

そして、努力の先に存在している面白さが不確定なのであれば、多くの人は有り余るほどに存在している「他のゲームで遊ぼう」と考えるに違いありません。なぜ高いハードルを乗り越えてまで囲碁や麻雀が遊ばれるのかと言えば、先人たちによる確固たる評価があるからこそなのです。

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▲囲碁はルール自体は単純ですが、「石の生死」の概念や、シチョウなどのセオリーを理解しなければゲームになりません

 

 

【④「伝える方法」の模索】

本作にも同じことが言えます。自分が「このゲームは間違いなく面白い!」という確信を持つことができたのは、約10度目のプレイでした。ジュエルディガーは囲碁などと違って、初プレイで「一体何をすればいいのかわからない」というほどにハードルが高いゲームでは決してないのですが、それが逆に単純で底が浅いゲームに見えてしまうという課題がありました。

実際にモックを持っていって、テストプレイをしてもらっていた初期の段階では肯定も否定もされず、どんな人からも何のリアクションも出てこないという実に不思議な結果になりました。恐らく、遊んでいただいた多くの人が「欠陥や破綻はないものの、取り立てた長所もない」という、最初に自分がプレイしたときと同じような印象を持ったのだと思います。

そこで、次にルールの説明に加えて、さらにプレイングの解説をおこない「今まで自分たちが見つけてきたセオリーを伝えながら遊んでもらったらどうなるか?」を試してみることにしました。すると、今度は驚くほどに反応が変わり、非常に好評を得ることができました。

ゲームの本来の楽しみは、自分たちで考え、自らの手で楽しさを見つけていくことにあると思います。しかし、「ルールを理解してもらうこと」と「ゲームが持つ面白さを理解してもらうこと」はまったく違うのです。

この難題に対して、なんとか伝えるアプローチができないかと、さまざまな方法を考えながら制作したのが今作の「ジュエルディガー」です。このデザイナーノートもその一環ですが、フレーバーやコンポーネントを工夫したり、説明書の裏面には「テクニック集」を掲載したり、ポストカードという形で注意書きをつけるなど、自分なりの方法論で幾重にもアプローチを試みたつもりです。

 

本作と半年間向き合ってきた自分としては、間違いなく素晴らしいゲームであると確信しています。ぜひ自分なりに「一体どうすれば勝利へと繋がるんだろう?」と、多少なりとも腰を据えて遊んでみてください。必ずや、本作が持っている楽しさに気づき、楽しんでいただけるはずです!

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▲自信を持ってお届けする最新作「ジュエルディガー」。ぜひ遊んでみてください!


曖昧フェイバリットシングス 制作ノート座談会 第5回【曖昧の楽しみ方】(最終回)

chi1チカールこんばんは、明日の自分に捧げたい、チカールです。

 

nilニルギリ : たそがれ時の通り雨、ニルギリです。

 

pe1ぺぺR : 声はすれども姿は見えぬぺぺRです。第4回の【フレーバーとコンポーネント】の続きです。最終回です。

 

【曖昧の楽しみ方】

 

nilニル : どこかのゲーム会に行ったときに、初参加で人生ゲームとかすらやったことないような女性の人が来たことがあって。ドブルとかワードバスケットみたいな物凄く簡単なルールのゲームをやって貰ったんだけど、それでも「私帰ります…」みたいな空気になっちゃって。

 

 

nilニル : そのときに「コレ持って来てるんですけど…」って言っておそるおそる曖昧を出してみたら、「私これ楽しい!」って楽しんでくれて。隣の女性と、お題だった好きな漫画の話とかで意気投合して「えっ、まさかアナタも○○攻め×○○受け!?」みたいな話で盛り上がって、がっちり握手してたことがあった。

 

pe1ぺぺ : 二人とも腐女子だったのか(笑)。

 

 

nilニル : それで凄く楽しそうにその後も何度か遊んでくれて、「今日は楽しかった!」って最後まで残って帰ってくれたんだよね。

 

 

chi1チカ : それは作者冥利に尽きる経験だよね~!

 

 

nilニル : あれは本当に幸せだった…。だから初対面の人とも楽しんで仲良くなれるし、逆に仲の良い友達とやるのも熱い

 

 

chi1チカ : たしかに、気心の知れた相手と「大切にしている信念」や「仲間に求める要素」といったシリアスなお題でも一度遊んでみて欲しいな。盛り上がるパーティーゲームとは打って変わって、今まで見えなかった相手の人間性を垣間見るような、完全にゲームの範疇を飛び越えるような体験ができたんだ。あれもこのゲームのもう一つの側面だったね。

 

nilニル : しかもそれで対戦するので「見た目の清潔感」対「誠実さ」対「自分にウソをつかない」みたいな事に。凄い体験した…(笑)。

 

 

chi1チカ : そういう深いテーマに自分を投影しながら考えるのも、逆にお酒飲んでシモネタ縛りで遊ぶのも楽しいし、人を変えるたび、お題を変えるたびに楽しめるから、何回やっても飽きないしリプレイ性が凄く高い。

 

 

nilニル : しかも遊んで終わりじゃなくて、その後も話して盛り上がれるし、町中を歩いてるときにフッと「あの人、コレが好きって言ってたなあ」って思い出すときがあるんだよね。

 

 

chi1チカ : 今までにやって面白かったお題って何だった? 俺はストレッチ師の人に聞いた『ほぐし甲斐のある筋肉の部位』ってのも面白かったし、歴女の人に聞いた『好きな歴史上の合戦』ってのも楽しかった。

 

 

nilニル : グッと来たのは、最近芸人の女の人とやった『今までやって面白かったデート』っていうやつ。「深夜に猫を探して徘徊デート」とか「ヤクザとスカイツリーデート」とか色々凄いのが出てきて(笑)。

 

 

chi1チカ : 一緒に遊ぶ人の面白さが、そのままゲームの面白さに加わるからね~。

 

 

nilニル : このゲームの唯一の大喜利要素が「テーマに何を選ぶか」なんだよね。相手にとって興味がある面白いテーマを選べるかが、このゲームを楽しむ上での大きなポイントで、例えばサッカーに興味のない人に『好きなサッカー選手』を聞いてもどっちも楽しめない。

 

 

chi1チカ : そこは凄くあるよね。ゾンビ映画フリークの人に『好きなゾンビ映画』を尋ねたら、「ランドオブザデッド」「デイオブザデッド」「サバイバルオブザデッド」…っていう、まさかのオブザデッド縛りをされて、1ミリも理解できないけど終わった後の解説を含めてメチャクチャ楽しかったなあ(笑)。

 

 

nilニル : 全くわからないものの傾向が少しずつ見えてくのもまた醍醐味なんだよね。6枚って枚数も絶妙で、これ以上多いと書くのが面倒だし、少ないと見抜いていく楽しさがない。

 

 

pe1ぺぺ : 遊び心を加えるのも楽しいよね。『好きなゲーム』ってお題で全部ロックマンで1~6だったり、『好きな有名人』でSMAPの6人を書かれたり。「森くんは一体何位なんだ!?」って(笑)。

 

 

nilニル : ちょうど6枚のお題いうと、最近やった「あなたの推し松は?」も凄く楽しかった。「あのときは面白かったなー!」って思い返して語れるゲームになったよね。ただ、曖昧の欠点は一言で内容を伝えづらいところなんだよね。やって貰えればわかるんだけど…。

 

chi1チカ : でもコレは自信を持って人にもオススメできるね。アナログゲームは何百本って触ってきたけど、俺の中では5本の指に確実に入るくらい好きだし、ホントに惚れ込んだよ。だからこそ小うるさく色々と意見も言わせて貰ったけど(苦笑)。

 

 

 

nilニル : 当日は試遊台も2卓用意するし、ぜひ一回遊んでいって下さい!

 

 

 

(終わり)

 

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曖昧フェイバリットシングス 制作ノート座談会 第4回【フレーバーとコンポーネント】

chi1チカールこんばんは、今にも落ちてきそうな空の下で、チカールです。

 

nilニルギリ : MDは便利だったと思うお年頃のニルギリです。

 

pe1ぺぺR : 長座体前屈マイナス30センチのぺぺRです。第3回の【テストプレイ】の続きです。ゲームの見た目は大事だよ。

 

 

【フレーバーとコンポーネント】

 

chi1チカ : ゲーム性自体はほぼ固まった中で、「何かフレーバーをつけたらどう?」って話をしたんだよね。

 

 

nilニル : 最初はフレーバーとかをつけちゃうとブレちゃうと思ったんだ。キャラクターではなくて人が主役になるゲームだから。でも、そこで「手紙のやり取りにしたらどう?」って意見を貰って。

 

 

chi1チカ : カードのやり取りを「手紙を送る」っていうことにして、カードの下を覗く感覚も、封筒を破いて中を見る感覚に近いんじゃないかなって。

 

 

nilニル : やってみたらそれがハマったんだよね。そしてスタートプレイヤーマーカーのポストを見つけて…!

 

 

chi1チカ : コレが凄かったよね! 最初は巡回するイメージから「ペリカンの郵便屋さんの絵のチップとかどう?」って話をしてたんだけど、「コレしかねーじゃん!」っていうようなミニチュアポストを発見して。

 

 

nilニル : しかも箱に入れてみたらパッケージにピッタリで。この瞬間に全てが固まったところはあったよね。得点のカウントにも、切手の形のチップを作ることにして。

 

 

pe1ぺぺ : 切手はオシャレなデザインがたくさんあるから色々調べて、オランダの古い切手のデザインにしたんだよね。

 

 

nilニル : デザインに一目惚れ状態だったから、ちゃんと調べて工夫して、結果として法律的にもきちっとクリアな状態にすることが出来て良かった。

 

 

chi1チカ : ゲーム全体に統一されたテーマがついたことでグッとまとまったし、感覚的にも理解しやすくなったよね。この「手紙」っていうフレーバーは大正解だったよね。

 

 

nilニル : コンポーネントの数が単純に多いし、今までイラストレーターを使ったこともなかったから作るのは大変だったけど、いいモノに仕上げられたんじゃないだろうか。

 

 

chi1チカ : 早割に間に合わせようとして、時間ギリギリの深夜までずーっとメンバー間でLINEで「ああした方がいい、もっとこうした方がいい」ってやり取りしてね…。

 

 

pe1ぺぺ : 大変だったけどあれは楽しかったね! ドタドタした文化祭の前日みたいな感じで(笑)。

 

 

chi1チカ : ゲームのタイトルはどうやって決まったんだっけ?

 

 

nilニル : 好きなモノを使うゲームってことで、最初は「ブックマーク」っていう仮題とかもあったんだけど、中々しっくり来ない中でぺぺが「マイフェイバリットシングス」っていう単語を出してくれて。コルトレーン版のあの曲も好きだから「コレだ!」って思って。

 

 

pe1ぺぺ : 漢字2文字+カタカナがカッコイイ世代なもんで、椎名林檎の「無罪モラトリアム」とか「虐待グリコゲン」みたいにしたくて、掛け言葉として「曖昧フェイバリットシングス」になったんだよね。

 

 

nilニル : しかも英語にすると「EYE MY FAVORITE THINGS」になって、「見ろ」とか「見抜く」っていう意味にもなるから、「コレしかない!」って思って。周りから覚えづらいとは言われたけど、「曖昧」って略称になると思ってたからいいだろうなって思ったんだよね。

 

 

(続く)

 

 

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曖昧フェイバリットシングス 制作ノート座談会 第3回【テストプレイ】

chi1チカールこんばんは、白くまを小型軽量化して家庭でペットにしたいチカールです。

 

nilニルギリ : ポメラニアンは上から見るとカキフライにしか見えないニルギリです。

 

pe1ぺぺR : 人生の最後はクジラに丸呑みされたいぺぺRです。第2回の【ルール製作】の続きです。第3回、はじまり~。

 

 

【テストプレイ】

nilニル : 順位をわからないようにするコンポーネント周りをどうしようかって色々検討したんだけど、色んな形式を試した結果「スリーブの中にカード二枚」っていうところに着地したんだよね。

 

 

pe1ぺぺ : 最初はスリーブの上から書く形式だったし、スリーブを内側と外側の二重にするとか、数字チップを後から入れるっていう案とか色々あったね。

 

 

nilニル : でも、実際に作って試してみたら、下のカードを引き出す感覚がすごく楽しかったんだ。

 

 

chi1チカ : そうそう、人の秘密を覗き見るような感覚がよく出るんだよね。

 

 

nilニル : PP加工すればカードにペンで直接書いて消せるってことに気付いたのも発見だったよね。それでモックを作ってゲーム会とかに持っていったんだけど、その中でルールも少しずつ変わっていって。

 

 

chi1チカ : 最初は「単独勝利が2点獲得、同点勝利が1点獲得」っていうルールだったね。

 

 

nilニル : でも、結構「モヤッとしてて何をすればいいのかわかりづらい」って声があったり、親番が不利だったりして。そこでIKEちゃん(ひとじゃらし)が「同点の場合に親に近い側を優先する」って案を出してくれて。カードを出した結果が明確に決まるようになって、わかりやすいゲームになった。

 

 

chi1チカ : テストプレイでは他にも色々案が出てたよね。

 

 

nilニル : 「3位だけを先に明かして基準を作れ」とか、「0位はない方がシンプルでいい」とか、「手札をドラフト制にしよう」とか。「そもそも対決させる意味がわからないから、順位を当てるだけでいいんじゃない?」っていう意見もあった。「それなら、かたろーぐっていうゲームがあるんですよ…」って内心思ったりして…。

 

 

chi1チカ : そもそも「かたろーぐ」の存在を知ったのが後だったんだよね。いざモックが完成したら、「どうやら、かたろーぐっていう相手の好きな順位を当てるゲームがあるらしいぞ…」っていう話になって。

 

 

pe1ぺぺ : 知ったときは落ち込んで、「もう出せないな…」って絶望してボツにしようとしてて。私も「残念だったねー」って思ったけど、でもその後やってみたら「そこまで似てもいないし、十分すぎるくらい独自性はあるな」って話になって救われたよね(笑)。

 

 

nilニル : 今まで、期間は短いながらもいろんなゲームで遊んでみて、ゲームの要素が似ることはあり得ると知ってはいたんだ。でも、そもそも「好みを数字に変換する」という部分は核心の一つだったし、ゲームを考え始めるときに「今までない体験を作りたい」という所からスタートしたから、いきなりそれに反してしまったと思って本当に絶望したよ。その後、暗い顔のまま相談したら、チカさんやIKEちゃんに「別物だから作り続けろ」と言ってもらったおかげで続けられた。

 

nilニル : 自分としては、かたろーぐは一対一のプレゼント、曖昧は一対多のプレゼント交換のようなものになったので、結果別物で良かったなと思ってる。

 

chi1チカ : 俺もこのゲームにはホントに思い入れがあって、絶対に面白いから必ず世に出したいなって思ってたから。

 

 

nilニル : このゲームの特徴として、テストプレイしてくれた人がいい意見にしろ悪い意見にしろ、必ず意見を言ってくれるのが特徴だったね。微妙なもの見せると「うーん…」って顔して黙られることが多いんだけど。

 

 

chi1チカ : 必ず何かしら触った人が意見を言いたくなるっていう。ダメな物は流されるから、みんな何かしらの可能性を感じてくれたってことだと思うんだよね。テストしていく中で手応えはあった?

 

 

nilニル : 手応えはすごくあったよね。「これからテストしていくと色んなことを言う人がいるだろうけど、俺にとってコレは神ゲーだから!」って言ってくれた人がいたりして、嬉しかったね~。

 

 

chi1チカ : ニルさんは初めてのゲーム作りだったけど、何度もアップデートを素早く繰り返してたのも凄かったし、周りの意見の取り入れ方が抜群に上手かったと思うんだよね。人の意見を聞いてる内に自分が何を作りたかったのかを見失っちゃって、潰れてしまったゲームもいくつか見てきたし。

 

 

nilニル : そこはネットで事前にそういう記事を読んでたんだよね。「いかに意見を容れないかが大切。その人が見てるのはゲームの一部で、全体を把握してるのは作者しかいない。意見を容れるか容れないかの最終責任は常に作者にある」って。それからスタンスが決まったんだ。

 

 

chi1チカ : でも聞き入れないというのではなくて、いい意見を上手く吸収して取り入れていったよね。

 

 

nilニル : だから「このゲームを作ったの?」って言われたときは、必ず自分一人で作ったとは言わずに、「みんながいいアイディアを出してくれたんですよ!」って言うようにしてるんだよね。

 

 

 

(続く)

 

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曖昧フェイバリットシングス 制作ノート座談会 第2回【ルール制作】

chi1チカールこんばんは、おでんのダシをとる昆布がむしろ主役だと思っているチカールです。

 

 

nilニルギリ : 味噌汁にじゃがいもは具としてアリだと思うニルギリです。

 

 

pe1ぺぺR今年のコンビニのイロモノ肉まんが楽しみなぺぺRです。第1回の【着想】からの続きです。第2回、どうぞ~。

 

【ルール制作】

 

chi1チカ : それでニル宅に行って見せてもらったんだけど、一番最初のルールは「1~5位のランキングになるものをカードに書いてもらって、そのカードを1枚ずつ出して順位が高いほうが勝つ」っていう感じだったよね。

 

 


nilニル : そうそう、順位を見抜くだけのシンプルな感じでね。

 

 

chi1チカ : 初期はお題カードがあって「面白いと思うダジャレの順番」「自分が思う県の面積の広い順」とかあやふやなものもあったけど、「相手の好きなモノだけに絞って、自分で質問して書いてもらうっていう感じでいいんじゃないかな」って話になって。

 

 

nilニル : その人の興味とか関心がある分野とかについて聞いてみるのが一番面白いからね。あと、チカさんにやってもらったら「これ0位入れたら面白くなるんじゃない?」って言われて。あれは発見だったね~。

 

 

pe1ぺぺ : 嫌いなものを0位として、好きなものの中に1枚混ぜるっていう。あれで見抜く楽しさとゲーム性が膨らんだよね。

 

 

chi1チカ : その日にルールを変えながら何回かやってみたんだけど、「コレは凄いゲームだな…」ってすぐに思ったよね。「エヴァンゲリオン」vs「ローソン」vs「なかやまきんに君」vs「膝ひしぎ」みたいな超カオスな対決が実現して、「コレは面白いぞ!」って。

 

 

nilニル : チカさんの反応がだいぶ違って嬉しかったよね(笑)。どんなにジャンルが違ったものでも、お互い数字に変換してしまえば比較できるから勝負できる、というのはこのゲームの大事なポイントになったと思う。

 

 

chi1チカ : それから、最初は全然わからないような好きなモノの傾向が、カードを一枚出すごとに徐々に見えてくるっていう感じも新しかったね。

 

 

nilニル : カードを渡されたときに「エッ、この中に1位と嫌いなものがあるの!?」みたいな。

 

 

pe1ぺぺ : 私は考えながら書いてる時間が好きかな。花屋でバイトしてたんだけど、「好きな花」ってお題を出されたときに、後から説明するために理由を考えながら書いていくと、自分でも気づいてなかった発見があったりして。花屋の視点で「カーネーションは茎がすぐ折れるから0」って言ったら、「分からん!でも納得!」って反応が面白い(笑)。

 

 

chi1チカ : 実際にやってみると誰もいい加減に書かないよね。「自分の好きなモノを人にも知って貰いたい」っていう気持ちが必ずあるから。

 

 

nilニル : このゲームの核心に近い部分の一つだよね。何が好きで何が嫌いかっていう、価値観ってその人そのものだと思うんだ。それを語る機会って日常の中では意外とないんだけど、このゲームをすることで強制的に作ることができるんだよね。終わった後にみんなでその理由を聞きながら語り合ったりして。

 

 

chi1チカ : 人の好きなモノを知るというのと、自分の好きなモノを知ってもらうということ、その両方が凄く楽しい。曖昧って勝つだけじゃなくて、自分の傾向を見ぬかれて負けたときの方がむしろ楽しい部分ってあるよね。「よくぞ俺の1位を見ぬいてくれた!」っていう喜びがある。

 

 

nilニル : 「コイツとは友だちになれる!」って握手したくなるよね。ゲームには負けてるけど(笑)。

 

 

pe1ぺぺ : 『好きなおにぎりの具』で、1位が「明太子」で5位が「たらこ」だったりして、「なんでよー!」って理由を問い詰めたり(笑)。

 

 

nilニル : でもゲームとしてもちゃんと成り立ってて、チップを取るためにちゃんと考えられる部分もあるから、コミュニケーション要素とゲーム性でいいバランスになったよね。

 

 

chi1チカ : あと、ルールに「始める前に全員の手札を順番に読み上げる」っていう要素を加えたのが本当に大きかったね。最初は隣の人との絡みがほとんどだったけど、あれで他の人のカードまで全ての順番を考えながら遊ぶゲームになった。

 

 

pe1ぺぺ : このゲームはある意味ダウンタイムがないよね。人が出してるときでも「それ1位までありえるんじゃないの?」って話したりして。

 

 

nilニル : 「これが5位なら、1位はコレしかない!」とかウンチクを言いながら出して、それが見事に外れたり(笑)。

 

 

chi1チカ : 『好きなコスプレ』でやったときに、「布の面積が少ないほど強いに違いない!」とか言ってね(笑)。

 

 

 

(続く)

 

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