こんにちは、するめデイズのチカールです。
この度、自分にとって長年の夢でもあった最新作・プラネットプラントをついにゲームマーケット2019秋に出展できることになりました!
最初にこのゲームを作ったのはするめデイズができるより前の、今からちょうど5年ほど前だったのですが、そこからどういった経緯で今回の発売を迎えることになったのか、どのような着想と制作過程があったのかなどを語ってみようと思います。
思い入れが強い分、少々長くなると思いますが、ゲームデザイン上の話もできればと思いますので、ぜひお付き合い下さいませ!
【①最初の着想】
このゲームを最初に考えたのは、自分がアナログゲームというものと出会ってから半年くらいの頃で、まだまだサークルとしての販売などはおこなっておらず、野良のような形でいくつか自作のゲームのモックを自分で作っては、近くのゲーム会などに持ち込んだりを繰り返していました。
そして「とにかく1回自分の理想を形にしてみよう!」と思って制作したのがこのゲームでした。幼少期に星の王子さまが好きだった自分は、アストロノーカやスミレの花のように「小さな惑星で不思議な植物を育てる」というテーマを持ったゲームがどうしても作りたくて、それをどうしたら実現できるのかを試行錯誤しました。
そこでに思いついたアイディアが「ボードの下にカードを埋めて、上に引き抜ぬことで成長を表現し、花が咲いたら表向きにする」というものでした。これは会心のアイディアでした!
植物などを育てるボードゲームではこれまでカードを重ねて置いた枚数などで成長段階を表現するものが多く、ビジュアルで植物の成長を表現できているものはほとんどありませんでした。 さらに、この形式にすると植物を育てるという実感が得られながら、どの花を植えたのかが他のプレイヤーからわからないというメリットがあります。
植えてからの時間差がありながら、花が咲いたときに「左右の花壇に水を与えるシャワー草」「他のプレイヤーに弾丸が飛んでいくテッポウ草」など、さまざまな効果が発動したら楽しいゲームが作れるのではないか…そんなイメージが頭の中で膨らんでいきました。こうして、理想のゲームを求めて制作が始まっていったのです。
【②初期バージョンのテスト】
複雑な効果は排除したいという思いから、花の種類は1度のプレイで内容を把握できる16種類まで厳選することに。灯りで照らして隣の花壇の成長速度を上げる花、他人の花壇から奪って差し替えてしまうような花、黄金をまぶして他の花の価値を上げるような花はどうだろう。花のネーミングにはドラえもん感も盛り込んで…ウン、面白くなりそう!
花というフレーバーを大切にするために、「開花を旬の季節と合わせる」というゲーム性と「水やりの苦しさ」を表現し、苦しい時期を乗り越えながらも花が開花することで一気にコンボによってお金が増えるという爽快感を実現するために、システムを練っていきます。
こうしてプラネットプラント(初期は「チュウリッポ」という名前でした)の最初のモックが完成したのですが、ゲーム会に持ち込んで遊んでもらってみるとその反応はまさに賛否両論そのものでした。
成長と開花の面白さを楽しんでくれた方もいた反面、初期は「一体どんな花が咲くのか他のプレイヤーからわからない」「苦しい時期を乗り越えながら花が育って開花を迎える」というフレーバーを大切にしたかったあまり、最初の1年が花を育つのを待つだけの冗長な時間となってしまっていたり、山札からカードを引いてくるだけという運要素の強さからリプレイ性が低いという指摘もありました。
なにより、一番賛否が多かったのが「攻撃性が強すぎる」という指摘でした。自分の中では咲いた花を使って攻撃や防御の駆け引きを繰り広げるという、かなり毒のあるイメージでゲームを制作していたのですが、「ほのぼのしてる見た目やテーマとのギャップが強い」という意見が多かったのです。
なぜそのような意見が出ることになったのか。それは、自分がこのゲームを作る際に「不思議な花を育てる」というテーマとともに、「インタラクションのあり方をもう一度考えたい」というテーマを持って制作しようと決めていたからでした。
【③インタラクションについて】
当時は「ドイツゲーム」と呼ばれいたものが次第に「ユーロゲーム」と呼ばれるようになっていった時期で、それと同時に「どんどんインタラクション(他のプレイヤーに与える影響)が薄くなっていく」という傾向がありました(この傾向は現在も継続しています)。
共通だった山札が個別の「デッキ」になり、共用ボードから「自分の場」になっていく。中にはインタラクションが一切ないゲームも増えていき、「同じ手順で同じピースを使って、誰が効率の良い点数を取れるか」を個別で競うような、パズルタイプのゲームもよく見かけるようになりました。
特に90年代ドイツゲームには存在していた、誰を攻撃するかを指定する「ターゲッティング」は非常に嫌われる傾向が生まれ、どんどん他プレイヤーとの絡みがマイルドになっていく。しかし、自分にとってはそういった部分も含めて「みんなで遊ぶ」ゲームの味だという考え方があり、どうにもその風潮に違和感を感じ続けていました。
それは自分の幼少期のボードゲームの原点に、非常に攻撃性の強い「ウォーターワークス(水道管ゲーム)」があったからなのかもしれません。他者が必死に伸ばしてる水道に「水漏れ二股」という凶悪なカードをつけるのがなんとも楽しくて、「やめてくれー!」と叫ぶ友人たちと笑いながらよく遊んでいたのを覚えています。
そこで、もう一度「多人数で遊ぶ意味を持たせるための、直接的インタラクションの形があってもいいのではないか?」という提案を込めたゲームが作りたいという思いがあったのです。ちょっとした遊びの無邪気さと言ってもいいかもしれません。
ただし、当時はまだ国産の同人作品で中重量級~重量級のゲームというのは非常に珍しいものであり、受け入れられる土壌はほとんどありませんでした。「ゲームマーケット大賞」といった評価のシステムもなく、玉石混交の作品群の中で1時間以上かかるゲームを作ったり、買ってまで遊ぼうという人はかなり奇特でもあったのです。
その後、自分はこのモックを見て声をかけていただいた吉々庵を経て、メンバーとともにするめデイズを立ち上げることになるのですが、最初はコンポーネントヘビーのこのゲームを作るノウハウも当然なく、カードゲームを中心に作りやすいゲームからリリースしていくことになりました。 このゲームは「売ることを前提にしてない」からこそ作れたものでもあったわけです。
その後も欠点となる部分を見直しながら何度か改良を重ね、メーカーからの販売に期待をかけた部分もあったのですが、何度か立ち上がった話も結局はすべて立ち消えとなってしまい…。そんな中で気がつけば「いつか絶対に出したい!」と思い続けながらも、5年が過ぎてしまっていたのです。
【④「今なら」の期待を込めて】
そんな中で、知人のdaiとの共作もありながら「クアドラ」「たのめナイン」「せっかちプリンセス」「モンスカート」「ポコン」「アニマランブル」「ジュエルディガー」とリリースを続けてきたのですが、大変ありがたいことにゲームマーケット大賞からも何度かノミネートや優秀賞をいただくことができました。
ゲームマーケットへの出展者や参加者も増え続けていますが、その中で次第に中量級~重量級の作品を制作する方も増えていき、徐々に国産作品も選択肢の一つとして受け入れられる土壌ができつつあるのではないかと感じるようになりました。
自分の制作ノウハウの方も徐々に蓄積されてきたため、「今のタイミングだったら出すことができるのではないか?」と思い立ち、2019秋のゲームマーケットに向けて制作することを決めたのです。制作資金もかなりのものになりますし、初の中量級にどのような反応となるかも未知数ですが、自分の夢だと思って勝負をしてみることにしました。
製品版の制作に当たり、「どこまでだったら受け入れてもらえるのか」を見定めながらカードの効果やシステムを徹底的にブラッシュアップ。インタラクション要素は保ちながらも攻撃性は控えめにし、選んで買うことができる「苗の購入」という要素を追加。何度プレイしても楽しめるような心地いいランダム要素と思考性の兼ね合いを突き詰めていきました。最終的にはとても納得の行く形に仕上げることができたと思います。
【⑤システム面について】
プラネットプラントのシステム面についても、少し語ってみたいと思います。カード効果が中心となることから「TCG(トレーディングカードゲーム)」寄りのゲームと見られることが多いですが、自分が目指したのはカードの追加によって発散していくTCGではなく、効果を可能な限り削って凝縮させていくという逆方向のものでした。
花が咲けば必ずプラスのことが起こり、その相乗効果によりコンボが生み出されます。植え続けることで自分の星には能力がどんどん加わり、さらに強くなっていきますが、花壇の数には制限があり、植えた花の数だけ毎ターン水代がかかってしまいます。そのため、ずっと残していたい花を今売ってしまうべきかどうか、それとも取っておくべきか…といったジレンマが生まれます。
カード同士のシナジー(相性)やコンボもありながら、1度のプレイで覚えられる16枚に厳選し、それらのカードの絡み合いによってバランスを取っています。そして、カードの効果はいずれもシステム面にも影響を及ぼすものとなっています。何度かプレイしていただければ、ボードゲーム寄りという印象を持っていただけるのではないでしょうか。
例えば、どんどん永続効果を手に入れて強くなっていく拡大再生産では、使用コストや使用条件を加えたり、「経年」というシステムでどこかでブレーキをかけるのが一般的ですが、本作では「奪う」「売却させる」といった他プレイヤーの花の効果によってシステム上のルールを削っています。ほかにも「手札に枚数上限を加える」のではなく、「一番手札が多いプレイヤーからカードを1枚奪う」といった花を加えることで各プレイヤーの購入枚数を調整するといった具合です。
同じカードは4枚ずつあるため、「マネをすることができる」というのもポイントとなっており、それゆえに「見せつける」というインタラクションが生まれます。「そうか、そんなやり方もあるんだ!」と思ったら、本作ではマネをしたり、阻止をしたり、奪ってしまうといったこともできてしまうのです!
この部分を「黙々と自分の畑を育て続けたい」と考えられる方にどう受け止められるのかがやや気がかりな部分でもあるのですが、自分が目指したのは「えっ、それメチャクチャスゴイな!」「それちょっとヒドくない!?」とみんなで指摘し合いながらワイワイ楽しめるような『宇宙栽培生活』なのです。
植えてから花が咲いて効果を発動するまでに3ターンの時間差がかかるのが最大の特徴で、自分で何を植えたかも忘れてしまうことでしょう。しかし、ときには水代で減りゆく資金にも苦しみながら、「きっとこの花が咲けば何かいいことが起きるはず!」と過去の自分に期待を込め、見事に季節を合わせて花のコンボを決めれば一気に大逆転を決めることが可能です。
他の星のプレイヤーたちとの駆け引きも繰り広げながら、こんなワクワク感と爽快感を味わってもらいたいという願いを込めて制作したプラネットプラント。この独特のプレイ感をぜひ楽しんでみて下さい!