「ジュエルディガー」創作ノート

こんにちは、するめデイズのチカールです!

ゲームマーケット2018秋では、自身にとっては7作目、daiとの共作としては「たのめナイン」「ポコン!」に続いて3作目となる新作「ジュエルディガー」をリリースします!

ゲームの内容に対しては強い手応えを感じている半面、本作をリリースするに当たっては非常に考えることが多く、中々に難しい制作となったのですが、そんな本作の制作経緯をデザイナーズノートという形で語ってみようと思います。

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▲「ジュエルディガー」のパッケージイラスト。レトロポップでカワイイ仕上がりになりました!

 

 

【①共作による特殊な着想】

作は高校からの知人でもあるdaiとの共作によるゲームなのですが、彼との共作は奇妙なほどに毎回同じパターンを辿ります。

まずは、daiから「新しいゲームのアイディアを思いついた!」という声がかかり、ファミレスや喫茶店に集まって話を聞きます。ただし、この段階ではゲームとしてまとまっているわけではないので、持ってきてもらったモックで実際に試してみると、あっという間に処理が破綻したり次々に欠陥が明らかになり、残念ながら遊べるゲームとしては成立していないことが大半です。

しかし、そこから「この要素は不要だから削っていいんじゃないか?」「どうやったら遊べる形になるのか?」とアイディアを出しながら、しばらく話し合っていくと、なぜか同じコンポーネントを使った、まったく違う内容のゲームが完成していきます。そして、この段階ですでに製品版としてリリースする際とほぼ変わらない完成度まで、不思議と一気に仕上がってしまうのです。

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▲最初のテストは破綻も、「何か遊べる形にならないか?」とルールを検討していくと、新たなゲームが生まれていきました

 

例えば、「たのめナイン」の際は「四則演算の数式で10の倍数を作るゲーム」だったものが「1~9の足し算だけで10の倍数を作るゲーム」になり、「ポコン!」の場合は「オールマイティー入りの5目並べ」が「両面同じパネルが入ってるオセロ」になり、今作の場合は「ミープルが移動して他人を押し出す陣取り」が「同じ色を繋げながら裏返すパネル配置ゲーム」という、いずれもまったく違う形になりました。

そして、この特殊な制作方法を取ると、次に重要になってくるのが「これは一体どういうゲームで、どんな価値を持った作品なのか?」という評価をしなければならないということです。なぜなら、本来であれば先に立てるべきコンセプトが完全な後付けとなってしまうからです。

その評価の段階でお蔵入りとなったものも当然いくつかあるのですが、その中で「これは間違いなく面白く、誰からもプレイしてもらう価値がある!」と思えるものができた際には、そこからテストと調整を重ねながら最適な形を検討し、製品版を制作していくことになります。

 


【②プレイングの発見】

評価の過程で、思いもよらない発見があることもあります。例えば、「たのめナイン」はもともと2人用として考えたゲームでしたが、テストをしてみると3~5人でも問題なく遊ぶことができて、多人数の方がより盛り上がるパーティーゲームだったということが発覚しましたし、「ポコン!」は子供でも遊べる単純なブラフゲームながら、大人でも腰を据えて楽しめる戦略性の幅がありました。

今作を自分が最初にプレイしたときに感じたのは、「ルールはシンプルにまとまっていて欠陥はなく、十分にゲームとしても成立していてるが、抜き出た面白さはなく、目新しさも薄い」といった非常に微妙な印象であり、「他に思いつくものがなければ、次の新作の候補にしておいてもいいかな…」といった程度の感覚を持っていました。

ところが、そんな微妙だった第一印象を覆すことになったのがプレイングの発見でした

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▲より遊びやすい形のモックを制作し、テストプレイを重ねていくと…

 

daiと何度も対戦を重ねていくと、次第にこのゲームで有効となる闘い方のセオリーや略が次々に明らかになっていき、そのことごとくに対して驚くほどにバランスが取れている。「ルール」という基盤が生み出し、その先にあるプレイングを開拓していくことで、破綻が生まれるどころか次々に面白さが増していくという驚きの連続となり、最終的には自分もdaiも「このゲームは今まで作ったものの中でも、一番面白いんじゃないか!?」という評価へと変貌していきました。

ジュエルディガーはやればやるほどに面白さを増す、文字通りのスルメゲーだったのです!

 


【③「スルメゲー」という難題】

ところが、ここで「やればやるほど面白くなる、奥深さを持ったゲームができた!」と手放しに喜ぶわけにはいきません。なぜなら自分たちが作っているのは同人アナログゲームの新作であり、メーカー製品でもなければ伝統ゲームでもないからです。

同人アナログゲームの新作は現在、年に3度のゲームマーケットで約200~300本ずつ発売されています。メーカー製品や海外のデザイナーによる作品も次々に輸入されるため、これらの新作すべてを遊ぶどころか、把握することももはや絶対に不可能という状況にあります。

プレイするためには人数と場が必要になるアナログゲームの世界、まして当たり外れが激しく玉石混交の様相を呈している同人ゲームの世界では、最初のプレイで微妙と感じたゲームが、もう一度プレイされる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

例えば、同人ゲームの新作として「麻雀」が発売されたとすれば、役や点数計算をはじめとしたあまりに複雑なルールを誰一人把握することができず、広く遊ばれることはないでしょう。

では次に、基本的なルール自体は非常にシンプルである「囲碁」だったとしたらどうでしょうか?

これも、同じく広く遊ばれることはないでしょう。なぜなら、囲碁はシンプルなルールの上に構築されていく手筋やセオリーといったものを理解しなければ、ゲームとしての面白さを理解できないからです。指南書や講座などが数多く存在していますが、それらが存在しない段階から自力で発見していくことは極めて困難だと言えます。

そして、努力の先に存在している面白さが不確定なのであれば、多くの人は有り余るほどに存在している「他のゲームで遊ぼう」と考えるに違いありません。なぜ高いハードルを乗り越えてまで囲碁や麻雀が遊ばれるのかと言えば、先人たちによる確固たる評価があるからこそなのです。

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▲囲碁はルール自体は単純ですが、「石の生死」の概念や、シチョウなどのセオリーを理解しなければゲームになりません

 

 

【④「伝える方法」の模索】

本作にも同じことが言えます。自分が「このゲームは間違いなく面白い!」という確信を持つことができたのは、約10度目のプレイでした。ジュエルディガーは囲碁などと違って、初プレイで「一体何をすればいいのかわからない」というほどにハードルが高いゲームでは決してないのですが、それが逆に単純で底が浅いゲームに見えてしまうという課題がありました。

実際にモックを持っていって、テストプレイをしてもらっていた初期の段階では肯定も否定もされず、どんな人からも何のリアクションも出てこないという実に不思議な結果になりました。恐らく、遊んでいただいた多くの人が「欠陥や破綻はないものの、取り立てた長所もない」という、最初に自分がプレイしたときと同じような印象を持ったのだと思います。

そこで、次にルールの説明に加えて、さらにプレイングの解説をおこない「今まで自分たちが見つけてきたセオリーを伝えながら遊んでもらったらどうなるか?」を試してみることにしました。すると、今度は驚くほどに反応が変わり、非常に好評を得ることができました。

ゲームの本来の楽しみは、自分たちで考え、自らの手で楽しさを見つけていくことにあると思います。しかし、「ルールを理解してもらうこと」と「ゲームが持つ面白さを理解してもらうこと」はまったく違うのです。

この難題に対して、なんとか伝えるアプローチができないかと、さまざまな方法を考えながら制作したのが今作の「ジュエルディガー」です。このデザイナーノートもその一環ですが、フレーバーやコンポーネントを工夫したり、説明書の裏面には「テクニック集」を掲載したり、ポストカードという形で注意書きをつけるなど、自分なりの方法論で幾重にもアプローチを試みたつもりです。

 

本作と半年間向き合ってきた自分としては、間違いなく素晴らしいゲームであると確信しています。ぜひ自分なりに「一体どうすれば勝利へと繋がるんだろう?」と、多少なりとも腰を据えて遊んでみてください。必ずや、本作が持っている楽しさに気づき、楽しんでいただけるはずです!

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▲自信を持ってお届けする最新作「ジュエルディガー」。ぜひ遊んでみてください!