こんにちは、するめデイズのチカールです!
今回は色々とあってギリギリの駆け込み入稿という形になり、裏ではさまざまな苦労もあったのですが・・・・おかげさまで自身にとって6作目となる新作『サキヨミ対戦! アニマランブル』をゲームマーケット2017秋でリリースできることになりました!!
実はこの作品はするめデイズが出来るより前の、3年前に自分がアナログゲームと出会ったときに「こんなゲームを作ってみたい!」と思って『サキヨミモンスターズ』という名前でモックを制作し、地元を中心にテストプレイを重ねながらずっと寝かせ続けていたタイトルでした。
今回はこの作品を寝かせ続けていた理由と、どういった屈折猶予やリニューアルを経て製品版へと変化していったのか、そんな過程を語ってみようと思います。少々長くなりますが、ゲームの自作を考えている方にはいくらか参考になる部分もあるかと思いますので、ぜひお付き合いいただければと思います。
【ゲームの着想】
このゲームの着想は、3年前にアナログゲームというものに出会った自分が「デジタルの発想をアナログに盛り込んだらどんなものが作れるだろう?」と思ったことがきっかけで、プログラミングをするようにカードをセットし、それを順番に処理していくことでキャラクターを動かせないかと考えたのが最初でした。(当時の自分はまだ「プロットゲーム」といった用語も知らないような段階でした)
▲オンデマンド印刷と自宅のプリンターでモックを制作しました
「前進」「右旋回」「ダッシュ」「攻撃」といったさまざまなカードから5枚を選んで裏向きにセットし、それに従ってキャラクターが行動して闘うという内容。いわゆる「同時プロット」という方式になるので、相手がどんなカードをセットしてくるのかを予想(=サキヨミ)して闘うというのが醍醐味です。それもガチガチの思考で読み合うのではなく、子供から大人まで簡単なルールで気楽にワイワイと盛り上がれるようなパーティー対戦ゲームを目指そうと考えました。
モックを制作してテストプレイをしてみると、思った以上にすんなりと「ゲームとして成立する」という段階までは持っていけて、実際にプレイしていただいた多くの方からも「面白いね!」と言ってもらうことができたのですが、そこから製品としてリリースするためには、さまざまな問題点があったのです。ここでは、この4つの問題点を順を追って語ってみようかと思います。
▲テスト中のサキヨミモンスターズ。地元でチマチマとテストプレイを繰り返しながら、改良を続けました
①コンポーネントの問題
②対戦形式の問題
③プレイテンポの問題
④ブラッシュアップの問題
【①コンポーネントの問題】
3年間出すことができなかった最大の理由が「コンポーネント」です。中々のコンポーネントヘビーでイラストや資金的な問題もありましたが、何より難題だったのが「4色の立体物」というキャラクターコマでした。4色が揃う怪獣やロボットということで、ネットでありとあらゆるサイトを調べ、ついにはコマを飛び越えて「きょうりゅうクレヨン」という奇策まで考えたのですが、「その中に立たないコマがある」という致命的な欠陥の前にあえなく挫折・・・。
▲テスト版に使用していた怪獣コマ。メチャかわいいんですが、当然製品には使えません
木製コマはどうしてもテーマに合うものがなく、ついたてタイプでは向いている方向がわかりづらい。かといって立体は捨てたくない。「いっそのこと粘土でも同梱して、遊ぶ前に各自で作ってもらうか・・・?」などとまで思ったのですが、「むしろロボットor怪獣というテーマと、4色を捨てよう!」という開き直りがあり、4種類バラバラで他のカテゴリーまで拡大すれば何かないかと探した結果、イワコーさんのおもちゃ消しゴムという結論にたどり着きました。
▲「これなのか!?」と発見していきり立った恐竜クレヨン。しかし取り寄せてみると立たず・・・
立体物として非常に出来が良く、耐久性も問題なく、バリエーションも豊富で、コストの面でも十分に及第点。使用許可をいただけるかもドキドキではあったのですが、問い合わせたところ快諾をいただけて一安心。パソコンが故障して作っていたデーターが入稿3日前に完全消失するという壮絶なトラブルもあったのですが、執念のリカバリーでなんとか入稿。イラストは引き続き小桜世界一さんにお願いし、親しみやすくワクワクするような雰囲気に仕上がったのではないかと思います。
▲最後にたどり着いた「おもちゃ消しゴム」。造形も素晴らしく、とってもカワイイ!
【②対戦形式の問題】
次に対戦形式の問題です。細かいシステムに比べてわかりやすい部分なのですが、ここが意外と難航しました。4人対戦ということで最初はデジタル的な発想で「生き残ったプレイヤーが勝ち」というボンバーマン的な形式にしていたのですが、それだと先に死んでしまったプレイヤーが後は見ているだけという状態になってしまいます。1プレイが数分で終わるデジタルゲームに対して、1プレイに何十分とかかるアナログゲームに脱落は非常によろしくないわけです。
それに、生き残ったら勝ちとなる形式だと「攻撃せずに逃げ続ける」という作戦が有効になり、プレイに積極性が出ません。ならばと「トドメをさしたプレイヤーに点が入り、先に3点取ったプレイヤーが勝利」という方式にしたのですが、これだと「やられてもいいから適当に攻撃する」という雑なプレイが横行したり、「トドメにならない削るための攻撃」というものが他者へのアシストにしかならず、攻撃を当てるということに不毛感が生まれてしまいます。
それを解決する方法としてようやく閃いたのが、「タッグマッチにする」というものでした。チームを2つに分けてしまえば、攻撃を当てるということはすべてが自分たちにとって有益な行動で、ダメージを受けるということはすべてが自分たちにとって不利な行動になります。他者の行動の影響力が1/4から1/2に拡大されるというのは非常に大きなもので、味方との無言のコンビネーションや誤爆の盛り上がりなども楽しむことが出来るようになりました。
実はこのゲームは2~3人でも問題なく遊べるので、プレイ幅が出る「2~4人用」として出すか、「タッグマッチ専用」として出すのかは結構頭を悩ませた部分だったのですが、推奨しない形式で最初に触れてもらって「微妙だな・・・」と思われるよりはベストの形式で楽しんでもらうのが一番だと思い、製品版ではあえて「2vs2専用」と割り切って出すことにしました。
▲開発途中までは、「熊vsライオン」という少々謎なテーマでした・・・
【③プレイテンポの問題】
今回システム面で最も頭を悩ませたのがこの部分でした。最初は「全プレイヤー分のカードをまとめてシャッフルし、毎ターン8枚ずつ配り、その中から5枚を選ぶ」という形式だったのですが、毎回カードを集めて、シャッフルして、配ってという繰り返しは著しくテンポを損なってしまい、次のラウンドを継続するためのモチベーションが大きく失われてしまっていました。
それならばと「個別デッキにする」という対策を考えたのですが、それでもまだテンポが足りない。そしてついに行き着いたのが「シャッフルを一切しない」という方式でした。具体的には、毎ラウンド8枚中から使う5枚を選択するゲームなのですが、デッキの総枚数を「18枚」に設定することで、「どんな適当な順番でも使った5枚を山札の下に入れれば、必ず2ターン後に出てくる」という方式を思いついたのです。これは会心のアイディアでした!
この形式は圧倒的にテンポが上がるだけでなく、回ってくる手札をマネジメントしたり、相手が使ったカードが2ターン出ないことを活用して「読み」に使うことが出来るという副産物も。さらに、全体的な攻撃のダメージを一撃死すら発生するような「あえてバランスを崩すほど」に底上げしました。「アナログゲームは理屈上の面白さよりも処理のテンポを重視するべき」というのは、今まで何作かゲームを作ってきた中で間違いないと確信できる、自分なりの結論のひとつです。
【④ブラッシュアップの問題】
ここまで作った時点で「うん、これで完成したな!」という手応えは十分に感じられたのですが、本当に細かい部分でさらにグッと面白く出来たりするのがアナログゲームの調整です。自分は「初めて触る人に向けて、初プレイへの敷居を可能な限り下げたい」という考え方がいつも最優先にあるため、カードごとの複雑な効果テキストや、例外処理といったものは可能な限りなくしたいと思うタイプなのですが、テストプレイ段階から出ていた意見をいくつか取り入れさせていただくことにしました。
まずは、個別デッキにした副産物として「動物たちの能力差」というものを設定することにしました。あった方が「次はあの動物を使ってみよう!」とリプレイ性にも繋がりますし、どの動物とのタッグで闘うかというゲーム性にも繋がります。当然、個別にカードをバラバラに設定することも出来たのですが、そこは敷居との兼ね合いで「カードの種類自体は全員同じだけど、得意な分野は効果が高い」という調整にすることにしました。例えば、サイだったら正面への突進が強い、カンガルーだったらカウンターの威力が強烈・・・と言った具合です。複雑にはならない程度の塩梅で、個性を表現できたのではないかと思います。
もうひとつが、相手の攻撃を読んで跳ね返す「カウンター」の導入でした。これはテスト版では案にあったのですが、結局いつ引くかわからないという状態では運次第になり、攻撃を当てることに対する「明確性」が失われてしまいます。しかし、デッキのシャッフルを廃止したことで、「1度使えば2ターン使用不可能」という縛りが出来たため、再導入することもアリだと思えました。「先を読む」というゲーム性以上に、「先を読んだ気分になれる」という部分を重視することが、プレイ感覚の底上げにつながるのではないかと思ったのです。これは重要な部分で、面白さという概念が相対的である限り、理屈以上に感覚的な部分が大事だと考えています。
▲製品版のプレイ予想図です。あとは無事に仕上がってくれていることを祈るのみ・・・
――というわけで長々と語らせていただきましたが、アニマランブルが辿ってきた経緯はこのような感じです。現在は「個別にプレイして最終的な勝利点を競う」といった内容の、他者との絡みが薄いゲームが増加傾向にある中で、あえて「対戦型」というゲームを出すことに意味があるのではないかと考えていた部分もあり、タイトルにも「対戦」という言葉を入れさせていただきました。
ルールもカンタンで説明しやすいと思いますし、特にアナログゲームの初心者に対して「一緒に遊んでみようよ!」と勧めやすく、声をかけてワイワイと楽しめるようなゲームに仕上がったと思いますので、ぜひ一度お手にとって遊んでみて下さい!